先端テクノロジー用開発環境ICADV122

先端テクノロジー —Advanced Node— という言葉はとても魅力的で、多くの方が情報をほしがります。3年前、ケイデンスが最初の先端テクノロジー開発環境、Virtuoso ICADV121をリリースした当時は、20nmのプロセスノードが主に、Advanced Nodeと呼ばれていました。

テクノロジーはこの後、さらに進化を続け、いまや、その半分の10nmのプロセスノードがプロダクション用に利用できるようになっており、微細化の波は、とどまるところを知りません。

この進化に伴い、さらに、デザイナーが設計中に考慮しなければならない内容も、その複雑さも、増しています。

たとえば、複数枚のマスクを使用して一つのレイヤを実現するDouble Patterningも、マスクの数が、3枚、あるいは4枚に増えて、Multiple Patterningテクノロジーと呼ばれるようになり、かねてから話のあったSADP (Self Alignment Double Patterning)も珍しくなくなっています。デバイスのターミナルとコンタクトレイヤとの間に配線を実現するLocal Interconnect Layer、FinFET構造のデバイスも珍しくなくなりました。LDE (Layout Dependent Effect) として知られるデバイスの置き場所や、形状によって、デバイスのパフォーマンスが変わってしまう事や、さらに、複雑かつ多くの新しいデザインルールを設計時に考慮しなければならないようになりました。Virtuoso IC12.X シリーズは、これらの問題に効果的に対応するために設計された先端テクノロジー用の標準開発ツールです(図1参照)。[注1]

図1:先端テクノロジーの課題図1:先端テクノロジーの課題

先端テクノロジー標準開発環境ICADV122始動!

先端テクノロジーの世界では、ファウンドリー毎に製造手法やプロセスが異なり、もはや従来のような単一のデザインフローやソリューションでの対応は現実的ではありません。昨今リリースされたテクノロジーに対しては、ますます、各プロセステクノロジーごとに対する個別の対応が必要になってきています。このような状況に伴い、ケイデンスはICADV12.1の上位バージョンにあたるICADV12.2をリリースしました。本稿では、このICADV122 の主な新機能のうちから、Multi Patterning (MPT)に関する機能と、Width Spacing Pattern (WSP)に焦点を当てて紹介していきます。

1.MPT (Multiple Patterning)

カラーリングは、特にファウンドリー毎に手法の異なる部分です。テープアウト時のデザインのデータについても、ファウンドリーによって要求事項が異なります。テクノロジーの進化に伴い、その内容も、多岐にわたります。この結果、設計者が、デザイン中の多くの局面で、カラーリングを意識する必要が生じて来ました。ICADV12.2では、こういった要求にこたえるため、以下のようなエンハンスを施しています。

Dynamic Coloring用新カラーリングエンジン
MPT Palette
Property Editor
Dynamic Selection Assistant
MPT ToolBar

1-1.Dynamic Coloring用新カラーリングエンジン

ICADV12.2では、Dynamic Coloringを実現するカラーリングエンジンのMulti-Patterningへの対応を完了しています。図2で示すように、Multi-Patterning で発生するカラーリングエラーについての情報をリアルタイムに表示します。

図2:TPT Color Conflict エラー図2:TPT Color Conflict エラー画像をクリックすると拡大表示されます

1-2. MPT Palette

MPTPaletteは、設計者が色づけを行ったうえで、マニュアル配線をできるようにした機能です。カラーリングを最初から意識したいという実際のカスタマーからの要求を実現しました。

図3:MPT Palette図3:MPT Palette画像をクリックすると拡大表示されます

1-3. Property Editor

プロパティエディタもエンハンスされ、カラーリングの情報は、プロパティエディタ上で、確認、変更が可能です。

図4:Property Editor図4:Property Editor画像をクリックすると拡大表示されます

1-4. Dynamic Selection Assistant

Dynamic Selection Assistantは、Multi-Patterningに対応するためエンハンスを行い、Color と、その状態を示すStateフィールドを追加しています。マウスのカーソルを当てるだけで、そのポリゴンがどのような物であり、そのカラーリング情報がどうなっているかを、階層をまたいで知ることができる非常に便利な機能です。図6はStandard Via上での表示例を示します。

図5:Property Editor図5:Property Editor画像をクリックすると拡大表示されます

図6:Property Editor	(Via 上での表示)図6:Property Editor (Via 上での表示)画像をクリックすると拡大表示されます

1-5.MPT ToolBar

ICADV12.2では、思い切って以下のような小さなMPT ToolBarを用意しました。ユーザーからのICADV12.1で設けたMPT Assistantが、「大きすぎる」というコメントを反映させたため、この変更を行いました。使用できる機能に変更はありません。

図7:MPTAssistant図7:MPTAssistant

以下、図8に、ICADV12.2のMTP ToolBarによる、ICADV12.1のMPT Assistantの、機能の対応を示します。

図8:ICADV12.1 からICADV12.2 へのカラーリング機能対応図8:ICADV12.1 からICADV12.2 へのカラーリング機能対応画像をクリックすると拡大表示されます

2.WSP (Width Spacing Patterns)

WSPとは、一定の間隔で並ぶ配線パターンの繰り返しを定義しておいて、これをデザイン中に配置し、全ての配線を、定義したパターンに沿って行うというものです。

当初、このWSPは、SADPテクノロジーに効果的に対応する為に、設計されたものですが、図9に示すように、デザイン全体、あるいは、既存のWSP中に別なパターンをくりぬいて挿入したりすることが可能であり、デジタル領域等で多くの応用が考えられます。たとえば、図10に示すように、Standard Cell等で使用される配線トラックのパターンをあらかじめ、定義しておくことで、各インスタンスの配置が簡単に実現できます。

デザインのデジタル領域等の必要な部分にWSPによる配線パターンを定義しておくことで、デザインを効果的に進めることが可能です。(図11)

図9:WSP (Global Grid とLocal Grid)図9:WSP (Global Grid とLocal Grid)画像をクリックすると拡大表示されます

図10:STDCELLでの配線パターン定義図10:STDCELLでの配線パターン定義画像をクリックすると拡大表示されます

図11:WSPによるインスタンス・スナップ図11:WSPによるインスタンス・スナップ画像をクリックすると拡大表示されます

2-1. Track Pattern Assistant

WSPに関する全設定、操作は、Track Pattern Assistant 上で行います。Track Pattern Assistantは、新しいFilterと、強力なPattern Visibility and Selection 機能を実装し、ICADV12.1に比べ、格段に操作性を向上しています。

図12:Track  Pattern Assistant図12:Track Pattern Assistant画像をクリックすると拡大表示されます

2-2. Transparency Options

トラックの表示をした常態でのWSP上での操作は、表示が、混雑するため、時として操作が行いづらくなる場合がありました。ICADV12.2では、Transparency Options メニューを実装し、操作性の向上に貢献しています。(図13)

図13:Transparency Options図13:Transparency Options画像をクリックすると拡大表示されます

まとめ

ICADV12.1 がリリースされた当初は、多くのユーザーが、IC6.1を使用して、先端テクノロジーの設計を完了できると考えていました。ところが、本稿で取り上げたような機能が必要となる様な、多くの先端テクノロジーならではの要求事項は、ICADV12.2の使用が必要不可欠であることを、この3年の間に、ユーザーの方々が、体感したように感じます。したがって、IC6.1で、設計を行い、その困難さを実感したユーザーのほとんどは、現在、先端テクノロジーの設計には、IC12.Xを使用しています。今日、IC12.Xを使用して、先端テクノロジーを用いた、製品向けのデザインの設計を完了、または実行中のユーザー数は80を超えており、半導体ファウンドリーの主要テクノロジーのほとんど全てを網羅しています。ケイデンスのICADV12.2は、世界中で多くのユーザーに認められた、先端テクノロジー向けの標準開発環境です。

米国ケイデンス・デザイン・システムズ社
Advanced Node Group, CPG
石川 浩

注釈
  1. 先端テクノロジー開発環境、ICADV12.Xの一般的な内容については、The Sound of Cadence June 2012 Vol.5をご覧ください。

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