「こんなこと気にしてどうするの?」シリーズ第7部: デバイスの信頼性解析

前回まで、プロセスばらつきが回路性能に及ぼす影響を理解して最小化することを主眼としてロバストな設計について説明してきましたが、今回はロバストな設計の別の側面である信頼性について考察してみます。回路の信頼性は平均故障間隔 (MTBF) により測定されますが、MTBFは故障から次の故障までの間の予想経過時間を表します [1]。故障は以下に示すバスタブのような形状の曲線で観測することができます。初期故障は製造欠陥によるもので、ウェーハ、パッケージ、バーンインの試験により故障製品を取り除くことで対応ができます。初期故障するデバイスが取り除かれても、イオン化放射によりレジスターのビットが書き換わってしまうといったように、いろいろな偶発的現象で故障は発生します。最終的には、定格動作条件でデバイスが故障してしまいますが、このような故障は摩耗故障と呼ばれます。

図1: 故障率バスタブ曲線図1: 故障率バスタブ曲線

デバイスが疲労して摩耗が始まると、平均故障間隔時間が短くなりバスタブ曲線が持ち上がるようになります。設計者はMTBFをいかに最大化するかに腐心しますが、MTBFの最大化にはデバイスとインターコネクト両方の寿命を最大化する必要があります。

最初に考慮すべき点は、デバイスの故障がどのようなものであるかについて考えてみることです。この考察の前に、まずここで取り上げる故障は定格外での使用によるものではない点に注意する必要があります。トランジスターに過大な電流を流すと破壊されて故障を引き起こしますが、この種の故障は安全な動作領域外での使用によるもので、その対応策は定格外で使用しないという極めて単純なものとなります。「デバイスの故障とは?」という最初の問題に立ち返って考えてみますと、その答えは考察対象のデバイスの種類に依存することが分かります。たとえば、MOSFETの故障種類はコンデンサーの故障とは異なるものとなります。ではまず、MOSFETしきい値電圧でのホットキャリア注入をデバイス故障の一例として見てみましょう。ホットキャリア注入はトランジスターのしきい値電圧の変化を引き起こします。

図2: ホットキャリア注入図2: ホットキャリア注入

デジタル回路では、トランジスターのしきい値電圧が増大すると駆動電流が減少し、回路が故障を起こすまで遅延が増大します。一方アナログ回路ではHCIが回路性能に及ぼす影響はより複雑なものとなります。たとえば差動対の一つのトランジスターのみがHCIを受け、他方は影響を受けない場合には、HCIによってオフセット電圧が時間とともにドリフトすることになりますが、この例からHCIがアナログ回路でデジタル回路よりもより大きな問題となることが分かります。次に、インターコネクト故障であるエレクトロマイグレーションによる空隙と突起について見てみましょう。エレクトロマイグレーションは、電界による金属イオンの強制移動です [2、3]。金属イオンが移動すると、ある箇所では金属がなくなって空隙となったり、逆に集積する箇所では突起を形成したりします。

図3: エレクトロマイグレーション例 (参考文献[2])図3: エレクトロマイグレーション例 (参考文献[2])

インターコネクト中の空隙はインターコネクトラインの断線の原因となり、突起は隣接するインターコネクトライン同士をショートさせることがあります。高信頼性の動作にはエレクトロマイグレーションへの耐性が常に重要となります。今までは簡単な経験則のようなもので対応が可能でしたが、エレクトロマイグレーションの解析にはより系統的な手法が求められます。次の2つのトレンドが、エレクトロマイグレーション解析の必要性をより大きなものとしています:

  1. プロセスのスケーリング: デバイスのサイズが小さくなると、金属インターコネクトの電流密度も下がるため、インターコネクトがエレクトロマイグレーションの影響をより受けやすくなります
  2. パワーデバイスの統合: あらゆる種類のパワーデバイスで主要な性能指数はオン抵抗となりますが、オン抵抗を最小化しようとすると、パワートランジスターでトランジスターの面積密度が増大します。このため、より小さな面積により大きな電流が流れることになり、エレクトロマイグレーションによる故障が発生しやすくなります

以上、デバイスとインターコネクトにおける故障について考察してきました。デバイスでは特性の変化が回路の故障を引き起こしますが、インターコネクトでは故障は金属線の断線かショートのどちらかとなります。

ロバストな設計と信頼性についての考察を行ってきましたが、信頼性の高い設計を実現するという目標に対しては、故障発生の確率を引き下げなければなりません。このことは簡単そうに思えますが、信頼性解析にはEDAツールが新しい解析ツールに対応する必要があるため、実際はそれほど容易なことではありません。次回の記事では、デバイスの信頼性解析のためのツール、さらにその次の記事ではインターコネクトの信頼性解析を行うツールについて説明します。

システムソリューション部
Art Schaldenbrand

参考文献

  1. https://en.wikipedia.org/wiki/Mean_time_between_failures
  2. “An Introduction to Electromigration-Aware Physical Design”, Jens Lienig, International Symposium on Physical Design 2006
  3. “Electromigration and Its Impact on Physical Design in Future Technologies”, Jens Lienig, International Symposium on Physical Design 2013, page 33-40

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