要旨:
- 大規模並列処理により、既存ソリューションと比較し、最大10倍高速化
- 過渡および定常状態解析により高精度な電気・熱の協調シミュレーションが可能
- 有限要素法および数値流体力学を統合したシステム解析環境
- ケイデンスのIC・パッケージ・PCB設計プラットフォームとの統合環境により設計イタレーションの削減が可能
ケイデンス・デザイン・システムズ社(本社:米国カリフォルニア州サンノゼ市、以下、ケイデンス)は、9月17日(米国現地時間) 、ICからシステム筐体まで、電子システムの全てのレベルの設計に向けた業界初の電気・熱の協調シミュレーションソリューションであるCadence® Celsius™ Thermal Solverを発表し、システム解析および設計市場における対応領域を拡大しました。今年初めに発表したClarity™ 3D Solverの成功に続き、Celsius Thermal Solverはケイデンスの新しいシステム解析イニシアティブにおいて開発された革新的な製品の第2弾です。Celsius Thermal Solverは、精度を落とすことなく従来ソリューションよりも最大10倍高速なパフォーマンスを実現可能で、既に多くの実製品適用実績を持つ大規模並列アーキテクチャー”Massive Parallel”を基盤として開発され、ケイデンスのIC、パッケージ、PCBインプリメンテーションプラットフォームとシームレスな統合環境を提供します。このことにより、システム解析、設計検討が可能となり、設計チームが設計プロセス早期に電気的な問題と共に熱問題を検出し軽減できるようになるため、電子システムの設計繰り返しを削減することが可能になります。詳細な情報は、www.cadence.com/go/celsiusthermalsolver をご参照ください。
ICおよび電子システム企業、特に3D-ICパッケージングを採用している企業は、設計プロセスの後半に設計変更や設計繰り返しが必要となり、プロジェクトスケジュールに影響を与えるような極めて深刻な熱問題に直面しています。エレクトロニクス業界が、電力密度が高い小型、高速、スマートでより複雑な製品へと移行するにつれ、複数の電力プロファイルと高い放熱に対応するよう従来の定常状態解析とともに、時間のかかる熱過渡解析テクニックを導入する必要が出てきます。従来のシミュレーターでは電子回路と筐体のモデルを大きく簡素化する必要があり、それにより精度が低下し、さらに開発プロセスを複雑にしています。
Celsius Thermal Solverは革新的なマルチフィジックステクノロジーを活用してこれらの課題に対応します。Celsius Thermal Solverは、ソリッド構造向け有限要素法 (FEA) と流体向け数値流体力学 (CFD) を活用し、1つのツールでシステム解析を完了します。PCBおよびICパッケージングでCelsius Thermal SolverをClarity 3D Solver、Voltus™ IC Power Integrity、Sigrity™テクノロジーと組み合わせて使用する場合、エンジニアリングチームは電気・熱解析を組み合わせたシステムレベル熱シミュレーションで、従来のツールよりも高精度に電気・熱の両方の流れをシミュレーションすることができます。さらに、Celsius Thermal Solverプラットフォームは、 先進的な3D構造における電力の実際の流れに基づいてスタティック (定常状態) およびダイナミック (過渡) 電気・熱の協調解析を実行し、実世界のシステム動作を可視化します。
Celsius Thermal Solverにより、電子回路設計チームが早期に熱問題の解析を行うことが可能となり、熱解析の問題を共有することにより、設計のリスピンを削減し、従来ソリューションでは不可能であった新しい解析と設計検討を可能とします。また、Celsius Thermal Solverではあらゆる対象オブジェクトについて大規模システムのシミュレーションを高精度に実行でき、ICのサイズや構造と、そのパワーディストリビューションをシャシーサイズの構造とともにモデリングできる業界初のソリューションです。
Celsius Thermal Solverは、Cadence Intelligent System Design™戦略を支えるものであり、最近発表されたClarity 3D SolverおよびVoltus IC Power Integrity Solutionで実績がある行列ソルバーテクノロジー上に構築されています。Celsius Thermal Solverの大規模並列アーキテクチャーはクラウド環境向けに最適化されており、従来ソリューションと比較して高精度で無制限の拡張性、最大10倍のサイクル時間を実現します。
Robert Bosch, GmbH コメント
Goeran Jerke氏 (senior project manager EDA Research and Advance Development, Automotive Electronics division)
「車載エレクトロニクス業界において開発される世界レベルの車載ASICやSiPの開発には高精度な電気・熱解析シミュレーションが不可欠です。ケイデンスの新製品Celsius Thermal SolverはVirtuosoプラットフォームに密に統合され、回路設計者、レイアウト設計者、パッケージ設計者が電気・熱解析シミュレーションを容易に実行することを可能にしてくれます。Celsius Thermal Solverは開発TATを短縮し、かつ正確な結果を与えてくれるので、我々はさらに多くの設計オプションを試すことができ、これまで試すことができなかった新たなケースに対して電気・熱解析シミュレーションを活用することが可能になります。」
Arm社コメント
Vicki Mitchell (vice president of systems engineering, Central Engineering Group)
「3D-ICやface-to-faceウエハー接合などの先進的なパッケージング技術は、モバイルからハイパフォーマンスコンピューティングアプリケーションまで様々な電子システムのパフォーマンスを向上してくれますが、一方では、電気と熱の影響によって生じる新しい設計課題も発生します。Celsius Thermal Solverがケイデンスのシステム解析ソリューションに追加されたことによって、我々の設計フローにおいて電気・熱解析協調シミュレーションをサポートすることが可能になり、我々のお客様は次世代のエレクトロニクス製品を提供することができるようになるでしょう。」
ケイデンス・コメント
Tom Beckley (Senior vice president and general manager, Custom IC & PCB Group)
「ケイデンスのIntelligent System Design戦略の一環として、我々は新たなシステム革新に向けて計算ソフトウェアに関する自社の広範な知識を適用し、お客様の課題に対応していきます。今年初めに発表したClarity 3D Solverの成功に続き、Celsius Thermal Solverはシステム設計の非常に重要な課題である熱の解析をサポートし、ケイデンスの新しいシステム領域への展開を促進します。」
提供時期
Celsius Thermal Solverは、先行顧客により既に製造に使用されており、一般向けにも提供を開始しています。